Ryukalice

ゼロ

2020-05-13

今回、いろいろと思うところがあって Twitter アカウントを削除した。

失ったもの

削除して数日が経つが、失ったものの大きさは痛感している。今冷静になって考えてみると、一端のエンジニアとしてはフォロー200人弱に対してフォロワー2300人はそこそこの数字だったと思う。削除前に挨拶ツイートしてから削除するまでの3時間そこらで、知らない人々から沢山のメッセージを頂いて、自分が見えていたよりも多くの人々に慕って頂いていることに気付いた。ただ、その直前には攻撃的な DM や野次馬的な DM を知らない人々から送り付けられていて、私は元々知人にすら DM を送る習慣がないため、「世の人々はこんなにカジュアルに他人に DM を送り付けるのか...」と思っていた矢先だったので、そういった人々の言葉を上手く受け取れないまま既読スルーしてアカウントを削除してしまった。同じく知人からも多くのメッセージを頂いたにも関わらず、全てを無視して逃走したことに関しては大変申し訳なく思っている。そのような、私のことを気にかけてくれていた人々の思いを無下にしてしまったという喪失感が後悔としては大きい。

次に多少汚い話をすると、フォロワー2300人程とはいえ、そこそこの世論操作(と言えば大袈裟すぎるが)を可能にしてしまっている実感は正直あった。例えば、今では COVID-19 の件でリモートワークが身近なものになってきたが、その前からリモートワークの勧め的な発信を Twitter やブログで積極的に行っていて、その結果として「社内で在宅勤務の申請が降りました!」のような連絡もいくつか頂いており、田舎暮らしの在宅勤務縛りの人間としては自分の働きやすいように社会に小さな影響を与えていた実感があった。そのような周りに起こした小さな変化が、私の評価だったり個人事業だったりに良い変化を与えてきたと思う。間違いなく客観的には「何を大袈裟な」と思われるはずだが、今は失ったものに思いを馳せて過大な自己評価をしてしまう時期なので勘弁してほしい。また、Twitter でシェアもしない本ブログを読んでいる人なんてほとんどいないと思っているので、自己陶酔の恥ずかしい話もできるというものだ。

さて、上でも軽く書いたように、副業でやっている個人事業の仕事の多くは Twitter 経由で受注しており、受託開発や slack 常駐の技術相談役や個人向けメンター業等の仕事を獲得することができていた。また、いくつかの会社からスカウトのメッセージももらった。社交辞令程度ではあろうが、「今度落ち着いたら仕事投げさせてください」とか「業務委託からでも声かけてください」とかいった話をしてくれる方もそれなりにいた。それらのコネクションを失ったことは個人事業主としては大きな損失だ。

最後に、多くの友人を失った。元々多くの人と Facebook や GitHub 等で繋がっており、前回の記事を読んでくださった方からも多くの申請を頂いたが、やはり気軽に雑談できるプラットフォームは失った。また、先程の話とも重複するが、何よりも突然連絡も寄越さずに自己都合で消えるという不義理を働いたことが心残りとして大きい。

そんなこんなで失ったものや後悔は大きいが、アカウントを復活させる予定はない。今回の件で、インターネットが少し怖くなったのだ。小学生の頃から MMO RPG やハンゲーム等で生きてきたインターネット漬けの私が、まさか30手前にしてインターネットを恐れることになるとは夢にも思わなかったが、今回の件で数人程度の誹謗中傷や野次馬メッセージとはいえ、人の意見を聞く気もない嘘の一次情報に踊らされた人々に目を付けられると地獄、ということを嫌と言うほど思い知った。ただ、私も攻撃される原因は充分にあって、普段から激しめの発言をすることはあった。残業が常態化している奴は無能だの、ブラック勤めは違法企業への加担者だの、不特定多数の大きな主語で攻撃的な発言をしてきたのは確かで、私に恨みを抱いていて「これを機に凸してやろう」という人がいてもおかしくないだけの発言はしてきた。そんな反省もあって、アカウントの復活予定はない。

得たものとこれから

インターネット怖いという教訓以外にも得たものはある。1つはコネクションの脆さに気付けたことだ。Twitter で多くの仕事を請けてきた身な上、一方的にアカウントを削除しておいてどの口が言うのだと思われるのは承知だが、Twitter でのコネクションはあくまで匿名でのコネクションであってアカウントが消えた程度で全てを失う。幸いにして Twitter で請けた仕事で蒸発されたり未払いがあったり等の問題は一度も発生していないが、世間に耳を傾けると Twitter で仕事を請けるのは危険だという声で溢れている。今回の件でやはり実名のコネクションは強いと思った。経験上も Facebook での仕事の信頼性は比較的高い。もっと言えば当然ながら実際に会ったことがある人との仕事の信頼性は更に高い。勿論 Twitter でカジュアルに仕事を出し合うのも大変楽しくはあったが、個人事業主としてのキャリアや将来性を考えると、実名でのコネクションや実際に会ってのコネクションを増やしていくことは早急に必要だと感じた。本業の方も COVID-19 の影響をもろに受けているので、リスクヘッジに尚一層力を入れる必要がある。

得たものはもう1つある。ここからが記事の本題なのだが、「ゼロスタート気分になれた」ということだ。これは一種の病気のようなものなので共感されることはないと思うのだが、私はゲームですぐにセーブデータを消してゼロからやり直したくなる癖を持っている。普通は仮にニューゲームしたくなっても、元のセーブデータを残した上で新たなセーブデータでニューゲームをすると思うが、私の場合は「ゼロスタート気分」に異常なこだわりがあって、ニューゲームする時は必ず元のセーブデータを削除して心機一転楽しむようにしている。今回の件でも、それに似たような感覚を覚えている。上述した失ったものからの現実逃避のような部分もあるし、多くのコネクションやキャリアや技術は残ったままなので、実際は全然「ゼロ」ではなく、むしろ「強くてニューゲーム」に近いものなのだが、まあ何故だか「ゼロスタート気分」に近いものを感じている。逆境をバネにとか、ピンチをチャンスにとか、そういうことは一切考えていないのだが、積み上げ直すにもいい機会だとは思っている。

私には心機一転ニューゲームした時のこだわりがある。それは「形から入る」ということだ。これからは個人事業に力を入れていこうと思っていて、まずは屋号を決めた。個人事業主として開業してから4年程の間、屋号は思い浮かばなかったので空のまま提出し続けていたが、今回心機一転ということで屋号を決めることにした。屋号は ryukalice にしようと思っている。変な屋号に見えると思うが、私の名前と妻の名前と飼い猫3匹の名前から頭数文字ずつを借りた名前だ。変な屋号だけあって Google 検索しても2件しか引っかからず、勿論ドメインも空いていたので早速 ryukalice.com ドメインを取得した。ちなみに今回は初めて Google Domains から買ってみた。また gmail で ryo@ryukalice.com のメールアドレスを動かした。普段仕事でやることを個人でやるのは多少楽しかった。何より、前述したように「ゼロスタート気分」で妻と「ドメイン取れた!」とか「メール開通した!」とか言いながら進めていくのも楽しかった。

形から入った理由はもう1つあって、起業を視野に入れようと思っている。今は副業で5,600万程度の売上で、有識者に話を聞くと今の売上程度で副業起業するのは税制面だけで見れば損の方が大きそう、との話だったのだが、やはりここ1年ほど「起業してみようかなぁ...」と悶々と過ごしてきたことだし、恐らく一度実績を解除しないと一生思い続けるのだろう。一度フリーランスになってみて一番良かったのは、「フリーランスやってみたいなぁ...」という悶々とした思いを抱えずに生きていけるようになったことで、今度は起業で同じ思いを抱えてしまっているので、失敗しようと損失の方が多かろうと、せめて「起業を目指している」という状態には持っていこうとしている。

そんなこんなで個人事業に力を入れつつ起業を目指すという方向に更に形から入るために、このブログを消して ryukalice.com にコーポーレートサイト的なものを立ち上げようと思っている。役割はブログと問い合わせぐらいなので、このブログで充分なのだが、私は飽き性なのでブログの引っ越し癖があるのだ。プログラマーになってからは、はてなブログ -> フルスクラッチ + さくらサーバー -> WordPress + XServer -> Ruby on Rails + Heroku -> Jekyll + GitHub Pages と乗り換え続けてきたが、今度は Next.js + Now で一本立てようと思っている。

バンドを組むにも会社を起こすにも、無駄に形から入って web サイトに時間をかけすぎるのは悪手だという話はよく聞くが、まあ早急に必要なものでもないのでゆっくりと作っていこうと思っている。ここ数年抱えてきたコンプレックスに「デザイナー業務をこなせない」というものがある。SIer -> SES -> フリーランス -> 自社サービス開発とキャリアを積んできた中で、要件定義やディレクションを主な業務として、組み込みや Windows アプリケーション開発エンジニアから web エンジニアにキャリアチェンジしてからは、フロント(Next.js), バックエンド(Ruby on Rails), モバイル(React Native), インフラ(Microsoft Azure) といった武器を手にしてきた。ある程度の広い範囲をやってきた身だが、未だに困るのはデザイナーの調達や CSS コーディングだ。単純にセンスがなく CSS そのものへの苦手意識があるので逃げ続けてきた道だが、やはり多少なりともデザインができれば、受注からデザインから開発からインフラから保守から全てこなせるようになるので、今後はデザインの勉強にも力を入れていくつもりだ。ちなみに昨日からコーポレートサイトのデザインを Figma の扱い方を覚えながら挑戦しているが、「直接 CSS 書いた方が早いな...」という思いと葛藤しながら勉強している。

そんな活動をしていくにあたって、やはり Twitter アカウントは必要に感じた。今やっていること、今考えていること、といった行動や思想がテキストで残るプラットフォームは、全てをインターネットに残したい自分に向いているのだと思う。それにやはりゲームの進捗やスクリーンショットは残したい。ただ、Twitter には見たくないものが沢山ある。私に攻撃してきた人々、その人々と絡む人々、駆け出しエンジニアをカモにする人々、カモになった人々、失言した人を寄ってたかって叩く人々、そういったものを見るのはもう辛いし、そういったものを見て偉そうに何かを物申そうとしてしまう自分も辛い。そのため、新しいアカウントは他者や業界に対する言及を避けて、あくまで自分のロギングや趣味交流用として運用していくつもりだ。デフォルトタイムラインに「XX さんがフォローしています」とか「XX さんがいいねしました」とかいった情報も、ミュートしているにも関わらず表示される好きな人が嫌いな人にリプを送る姿も、今は何も流れてきてほしくないのでフォローも控えるつもりだ。

終わりに

Twitter アカウントを消す前に、多くの方から「今後もブログは見に行きます」と声をかけて頂いたが、実際にどれほどの方がこの記事を読んでくださるかは分からない。もし、ここまで読んでくださった方がいれば「私は元気でやっています」ということと、「突然失踪して申し訳ございませんでした」ということだけ伝えておきたい。まだ情勢や私の精神状態も含めて様々なものが安定しない中ではあるが、これから改めて積み上げていく。