自らを商材として捉える働き方
ここ数日、終身雇用についての議論が散見される。 「終身雇用守るの難しい」トヨタ社長が“限界”発言
各議論を眺めていて、未だに終身雇用に期待している人々がこれほど多く日本に存在していることに驚いた。私は社会人になって丁度10年になるが、転職を繰り返したり個人事業主として開業したり等、1つの企業だけに依存しない生き方を選んできた。それは、自らを商材として捉えているためである。
労働活動を営業活動に例える
就職活動
就職活動を、商材の営業として考えてみよう。企業に対して自分という商材をアピールし、(雇用)契約を得るための活動が就職活動である。一般的な就職活動では、履歴書を多くの企業に送り回って面接してくれる企業を探し求める。これを商材の営業として例えると、突撃営業で受注を得ようとするようなものだ。対して、良いビジネスは魅力的な商材があり、商材の魅力を適切に説明でき、公にアピールすることで顧客の方から買いに来る。商材の価値を高めて公にアピールすることによって、こちら側から一社一社営業に足を運ばなくても、顧客側から連絡してくれるのが上手くいっているビジネスだ。就職活動も同様である。自分から企業に対して履歴書を送らなくても、企業の方から自分に興味を示してもらえるような動きをする。自らの商材価値を高めて、その価値を公にアピールするのだ。
私の2度目の就職活動は、ブログに自分の得意分野と苦手分野と労働に関する思想を書いて「誰か拾ってください」とポストしたことによって、とある企業の目に止まって声をかけて頂いたことで成功した。これはブログを影響力がある方に拡散して頂いたり、その企業のフットワークが軽く採用に積極的であったこと等の偶然が重なった結果ではあったが、私はこの経験から自らの市場価値が高まれば就職活動が更に楽になることに気が付いた。人事の経験から言っても、企業は大量にいる候補者の中から選定するよりも、明らかに優秀だとわかっている人材を引き抜く方が楽なのだ。
雇用契約期間内と終身雇用への期待
さて、雇用契約期間中の立ち振る舞いも現実のビジネスに置き換えてみよう。得意先が1社あるからといって営業をやめるだろうか。得意先の1社に依存して社運の全てを賭けるだろうか。いつその得意先を失っても会社が存続できるように手を打つはずだ。にも関わらず、多くの人々は自分の人生のことになると、現在雇用契約期間中の自社に依存してしまう。社内の全てのリソースを1つの得意先に極振りして他社への営業活動をやめてしまうことがリスキーなことと同様に、現在1つの雇用契約を獲得しているからと言って自らという商材を外部へアピールすることをやめることはリスキーだ。自社の商材を1つの顧客専用に最適化して汎用性を失っていくことがリスキーなことと同様に、自らという商材を自社専用に最適化して汎用性を失っていくこともリスキーだ。終身雇用を期待することは、得意先1社のみに依存して会社を存続させようとするのと同様に危険な賭けなのだ。
どのようにして自らの商材価値を高めるか
自らを商材として捉えてみると、就職活動での自分の売り方、一社に依存して終身雇用を期待する働き方の危うさが見えてきたと思う。当然、商材に魅力がなければ売れはしないことも見えてくる。仕事に困らないようになるためには、自らの商材価値を高める必要がある。自らの商材価値を高めるためには大きく分けて3ステップある。
1. ニーズを観察する
商材の価値は、求める人の数で変わる。今流行っている技術は何か、今高給を取れる技術は何か、今後求められそうな技術は何かを見極める。
2. 商材の魅力を高める
1でニーズを把握したら、自らが求められる人材になれるよう勉学や技術習得に励む。そのためにも、自分のリソースの全てを自社のために使ってはならない。商材を改良するための時間が残らないような生き方は危険だ。
3. 公にアピールする
どんなに魅力的な商材であっても、人々の目に止まらなければ価値が生まれない。今の時代はインターネットを通じて簡単に自己アピールができる。ブログに投稿を続ける、Qiita で技術共有を行う、StackOverflow 等の質問サイトで回答しまくる、Twitter のフォロワーを増やす等といった方法は今すぐにでも行うことができる。あとは勉強会やカンファレンスに顔を出す等、オフラインで広報活動をすることもできる。
以上だ。偉そうにこんな記事を書いた私も「3. 公にアピールする」は全くできておらず、ブログも大して更新していないし、Qiita には3記事程度しか投稿していないし、質問サイトでの回答も両手で数えられる程度しかしていないし、Twitter は独り言にしか使っていないし、勉強会やカンファレンスにも年に1,2度しか参加していない。今の収入の8割以上は過去に勤めていた会社で得た人脈の延長戦から生まれている契約だ。つまり自戒を込めて書いた記事なのであまり信用するな。