Ryukalice

内発的モチベーションに頼って勉強することを諦める話

2019-09-23

外発的か内発的か

外発的モチベーションとは、上司にケツを叩かれるとか、この仕事が終わったら報酬をもらえるとか、納期に追われるとか、そういった外部からの刺激によって生まれるモチベーションのことだ。他者からの賞罰や強制に依存するためコントロールが難しく、一般的には外発的モチベーションに頼ることは悪手とされていると思う。

対して、内発的モチベーションとは、技術的好奇心や やりがい といった、己の内から湧き上がってくるモチベーションのことだ。これがコントロールできる人は強い。上司にケツを叩かれなくても、報酬がもらえなくても、納期に追われなくても、モチベーションは己の内にあるので勉学も職務も滞らずに済む。お題を与えられなくても勝手に技術的好奇心によって技術力を高めていく姿は、世間の理想のエンジニア像とも言えるかもしれない。「エンジニアはプライベートで勉強すべきか」といった議論で度々散見される「できる奴は当たり前に技術に取り組んでて勉強している感覚すらないから」といったやつだ。強い。

無理なものは無理であることを認める

自己啓発書やビジネス書の多くに内発的モチベーションをコントロールする術について書かれているが、無理なものは無理である。自己啓発を拗らせていた頃にそういった類の本は1000冊程読んだと思うが、無理なものは無理である。これだけ娯楽に溢れた世の中で、内発的モチベーションに身を焦がしながら娯楽を投げ捨てて技術的勉学そのものが娯楽のように感じる等といった奇行は一部の適性のある優れた一部の人間だけに与えられた幻想だ。

恐らく、同じことを感じているソフトウェアエンジニアは3割近く存在しているだろう(知らんけど)。私は、湧き上がってこない内発的モチベーションに消耗するのはやめた。ポモドーロテクニックによりゾーンに入りやすくする?手を動かし始めたら作業興奮によってドーパミンで側坐核を刺激される?そんなものはフィクションだ。そんなフワッとしたモチベ術で消耗するよりも、外発的なモチベーションに依存し続けた方がマシだ。これが私のたどり着いた労働戦略である。

外発的モチベーションのコントロール

ここから話すのは、勤めている会社で己の仕事やビジネスの展望を提案できる立場にあり、個人事業主として自分の好きな仕事を請けられる立場でもある私の戦略なので、この記事を読んでいる貴方の参考になるかどうかはわからない。

結論から言うと、外発的モチベーションのコントロールに最も適している戦略は納期駆動開発である。これが最近噂の DDD(Deadline Driven Development) である。納期にケツを叩いてもらって、焦りと人質に取られた自尊心をモチベーションに勉強を行うということだ。幸いにして、私は高すぎる自尊心を持って生まれたので納期に対する強い執着があるのだ。つまり、まず仕事を請ける。実務に勝る勉強はない。未経験の技術であろうが安かろうが、まず仕事を請けるのだ。これだけで、勉強が「将来のためにやっておいた方が良いけど、今すぐやらなくても良い行為」から「今すぐやらないとヤバい行為」に昇格する。これで外発的モチベーションの獲得だ。

勉強したい技術を習得してから実務に励むよりも、実務側を勉強したい技術に寄せた方が効率が良い。当然、未経験の技術であっても自分を信頼してくれる顧客や自分の売り込み能力は多少必要である。また、新しい技術を実務で学ぶのに最も重要なのは余力だ。普段から8時間労働でいっぱいいっぱいであれば、未経験の見積もりも正確にできない技術を学びながら納期に間に合わせるのは困難を極めるだろう。残業なんて論外である。私は普段から労働は1日1,2時間を意識するようにしているので、「納期的にヤバければもう少し働けばいい」というバッファと心の余裕が新しい技術に挑戦するリスクを減らしている。それから「未経験技術であっても学べばすぐに習得できる」という最低限のソフトウェアエンジニアリングそのものの知見と技能は必要になる。

例として直近1,2ヶ月で言うと、私はフロントエンドとモバイルアプリケーション開発の経験を積みたい思いがあった。そこで、勤めている企業でモバイルアプリケーションの開発をゴリ押しして(実際ビジネス上ほぼ必須と見られていた)、外注するのではなく内製するように政治して、利用技術も全て任せてもらえるに至った。そうして、React Native を選択して晴れて未経験技術をプロダクトコードを書きつつ学ぶ身になれた訳だ。また、今月の副業では「バックエンドは結構やってきたし、モバイルアプリも覚え始めたし、あとはデザインもできれば最強だよなー」と思っていたので、せめて CSS の腕を磨こうと、紙面広告デザイナーのデザインを CSS コーディングする仕事も請けた。

このように、技術的に挑戦したい分野に対して、まず勉強から入るのではなく、実務から入るようにすることによって、内発的モチベーションに頼ることなく、外発的モチベーション(納期)に依存した状態で勉強を効率良く進めることができている。溢れる技術的好奇心で平日も休日も勉強して圧倒的成長している優秀なエンジニアを見るとコンプレックスを感じることもあるが、そういったコンプレックスによって「内発的モチベーション溢れろ〜溢れろ〜」と自己暗示をかけながら消耗するよりも、そんな幻想は諦めて外発的なモチベーションを己に与え続けた方が結果としてストレスも少なく学習効率も良いのではないか、というのが私の結論だ。